アンドリュー・ラティマー:Andrew Latimer
2020/07/22
キャメル(Camel)のアンドリュー・ラティマー(Andrew Latimer)が好きだ。
キャメルというのはイギリスの「プログレッシブ・ロック」と呼ばれるジャンルに属するバンドで、アンドリュー・ラティマーというのはそのギタリスト。
私が高校時代から20代半ばまで最も聴き続けたグループで、青春時代の思い出と共にある。
特に初期のキャメルのアルバムを聴けば、サウンドメイクの中心であるアンドリュー・ラティマー(Andrew Latimer)とピーター・バーデンス(Peter Bardens)は、ビートルズのジョンとポールのような存在で、その人物像にも大変関心を持った。
音楽の才能とそれを作る人の人格とは別であることは分かっているが、心を動かされ何度も涙する美しく優しいサウンドは「この人たちは絶対良い人に違いない」と思わせる力を持っていた。
やがてバンドメンバーは次々と立ち去り、オリジナルメンバーはアンドリュー・ラティマーひとりになってしまう。
アンドリューは、盟友であるピーター・バーデンスがグループを離れる祭、「RAINBOW'S END/失意の果てに」という曲を彼に手向けた。
アルバム「Breathless」のラストに収められている「RAINBOW'S END」から一部抜粋
…
僕らが歌っている歌は別々だけど
僕らのかつての愛は続く
時間が経てば 僕らはまた一緒になれるだろう
虹の果てを探し続けよう
そして虹が見つかれば その時やり直そう
…
ドラムスのアンディ・ウォード(Andy Ward)が精神を病み、ドラッグやアルコールに走り、自殺未遂にまで至った祭にも、アルバム「The Single Factor」に「手の怪我による一時的な不参加」とだけクレジットし、どうしても一緒に演奏できないと告げられた彼に「A Heart's Desire/別れの子守唄」という曲を贈っている。
- The light is fading
The cause invading
All the hopes that you were building
On tomorrow
Now you must go - So stretch your wings
As nature sings
Her farewell lullabye to soothe you
Through the changes
When you must go - The gift is knowing
Your strength in going
When the time has gone beyond
Your heart's desire
And you must go
英語の訳は苦手だが、1.は、光が失われつつあることに胸を痛め、2.は、心が癒されて回復することを願い、3.は、本来のあなたは強いことを知っている、と歌っているように感じる。「you must go(あなたは行かなければならない)」は、元通りに戻って帰って来て欲しい、という願いが込められている気がする。
ピーター・バーデンスが癌でこの世を去った年に、アルバム「A Nod And A Wink」をリリース、「愛を込めてこのアルバムをPeter Bardens (1945-2002)に捧げたい」と記した。
キャメルはコンセプトアルバムを多数リリースしている。
ポール・ギャリコの短編小説「スノーグース」を基にしたアルバム「 Music Inspired by The Snow Goose」。
ルバング島に留まり続けた日本の軍人「小野田寛郎」を基にした「Nude」。
ベルリンの壁をテーマにした「Stationary Traveller」。
スタインベックの小説「怒りの葡萄」を基にした「Dust And Dreams」。
彼の祖父母が体験したアイルランドの悲劇を基にした「Harbour Of Tears」。
「Harbour Of Tears」は彼のお父さんが他界した際に、その出身地であるアイルランドに関心を持ち、一家離散などの歴史があったことを初めて知ったようだ。
様々なストーリーや自身の体験は演奏に反映され、時折ギターが嗚咽するように泣き叫び、言いようのない悲しみや切なさで胸を締め付けられる。
嬉しいことに、2003年にオリジナルメンバーのアンドリュー・ラティマー(ギター)、ダグ・ファーガソン(ベース)、アンディ・ウォード(ドラムス)が再会し、キャメルの前身バンド名「Brew」という名前でプロジェクトを開始したという。
レコーディングした「Left Luggage」という曲名は、「重荷を下ろす」というような意味だろうか。
アンドリュー自身も難病を患い、骨髄移植を受けるなど一時期は入退院を繰り返していたが、奇跡の復活を果たし、昨年(2016年)は日本での公演も実現した。
関連ページ
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