アートとしてのアルバムジャケット:女性ベーシスト編
2021/11/13
Esperanza-Spalding / Junjo:エスペランサ・スポルディング / Junjo
2作目の「Esperanza」がリリースされた頃(日本ではデビューアルバム)、「なかなかいいねー」と思い、どんな人なのか映像をチェックしてみると、「え!このベースラインを弾きながら、歌ってるの?」「しかも楽しそうに」と驚いた。
以来、最も注目するアーティストになっている。
最近はポップ、ロック、エレクトロニックな作品や、ファッション、まるでミュージカルのような演出の舞台など、その才能は留まることを知らないが、個人的にはこのアルバムのようなJAZZを聴くのが一番落ち着く(落ち着くJAZZかどうかは別として…)。
育ちの良さそうな顔立ちなので、さぞかし子供の頃から英才教育を受けたのかと思いきや、家庭の事情で苦労が多かったようである。
大学時代に経済的な困窮で音楽の道を諦めようとした時に、パット・メセニーにその才能を買われツアーに起用されたという話しもある。
ナイス、パット・メセニー。
Tal Wilkenfeld / Love Remains:タル・ウィルケンフェルド / ラヴ リメインズ
ジェフ・ベックの舞台に登場した時に初めて彼女の演奏を聴いた。見た目はキュートな女の子、しかしベースのテクニックは凄い。
それは単なるテクニシャンではなくて、しっかりとしたグルーヴを持ち、音楽的にも全体の演奏を支えている頼もしい存在だ。
その実力はジェフ・ベックの他、チック・コリア、オールマン・ブラザーズ・バンド、ハービー・ハンコック、リー・リトナー、TOTO、ジャクソン・ブラウン、トッド・ラングレン等々、様々なジャンルのアーティストとの共演からも窺える。
掲載したジャケットは、12年振りにリリースされたソロアルバムで、自身初のヴォーカル・アルバム。
1作目のジャズ・フュージョン系を期待している人には、賛否が分かれる評価になっているが、大御所のサポートをするベースプレイヤーだけでなく、シンガーソングライターとしても音楽の幅を広げていく姿勢は、アーティストとして当然だし、どのように成長していくのかとても楽しみだ。
Suzi-Quatro / Suzi-Quatro:スージー・クアトロ / サディスティック・ロックの女王
女性ベーシストと聞いて真っ先に思い浮かぶのはこの人「スージー・クアトロ」。
ラジオで洋楽の番組を聴き始めた中学生の頃、「Can The Can」が大ヒット。
当時の私はロックを聴き始めたばかりなので、シンプルで分かりやすくキャッチーなサウンドは、まるで入門編のようにロックの世界に誘ってくれたような感じがする。
「スージー・クアトロ」を初めてビジュアルで見たのは、レコード屋さんに貼ってあった彼女の大きなポスター。全身黒のレザースーツでベースを弾きながらシャウトしている姿は「カッコいいー」の一言。
でも、このレコードジャケットのように「さぞかし悪い連中なんだろうなー」と勝手にイメージしていたが、ある日某テレビ番組で、スージー・クアトロとバンドメンバーの普段の様子が映されていて、彼女のあどけない笑顔と無邪気に遊んでいるバンドメンバーを見て、一気にファンになった。
2019年にソロアルバムをリリースした話を聞いて、驚きとともに何だか嬉しくて元気をもらった。
Linda-May-Han-Oh / Aventurine:リンダ・メイ・ハン・オー / アベンチュリン
最近までこの人の存在を知らなかったが、パット・メセニーのツアー参加やアルバム参加によって知ることができた。
2019年リリースのこのアルバムは4作目で、彼女の底知れぬ才能を思い知らされる素晴らしい作品。
弦楽四重奏のクラシカルで美しい響きと、現代ジャズが融合している斬新なサウンド。
楽曲は緻密で難解だが、美しくて聴きやすく、ジャズならではのグルーヴ感やノリも忘れてはいない。
リンダ・メイ・ハン・オーは、中国系移民のマレーシア生まれ、オーストラリア育ち。
クラシックピアノと管楽器も学び、高校時代はロックバンドでベースも演奏していた。
その後ジャズベースを学び、数々のコンペティションで優勝後、米国に渡り本格的な活動が始まった。
これほどの才能あふれるアーティストが、新しい音楽を届けてくれることに、久々にワクワク感と幸福感を覚えた。