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アートとしてのアルバムジャケット

2020/07/22

20代前半、東京で1人暮らしをしていた頃は、部屋の壁がレコードラックで埋め尽くされ、まるで中古レコード屋さんのようだった。

巨大なスピーカーを左右に配置し、真ん中にはアンプ・レコードプレーヤー・カセットデッキ、チューナーを並べて、真剣に音楽に向き合っていた。

左右のバランスを取るため、ちゃんとスピーカーのセンターに座り、レコードを聴く時は基本的に何もしない。楽器一つひとつの音まで丹念に拾って聴く。聴くだけでなく、ミュージシャンやエンジニアは誰か、どこのスタジオでいつの録音か等々、詳細なデータまで調べるといった、極めて真摯な姿勢あった。

考えてみれば、今時こんな風に音楽を聴くことはまずない。
音楽関係者は別として、巨大なオーディオセットなんて必要ないし、そもそもあまり売っていない。
今の時代は、音楽との関わり方自体が変化している気がする。

レコードを聴いていた当時、音楽以外に刺激を受けたのが、30cm×30cmのアルバムジャケットだった。「ジャケ買い」なんていう言葉が出てくるほど、芸術性の高いアルバムジャケットが沢山ある。

以下、印象深いアートワークのアルバムたちを並べてみる。

Yes / Fragile:イエス / こわれもの

yes_fragile数多くのプログレッシブ・ロックのアルバムデザインを手掛けてきたロジャー・ディーンの作品。
イエスは4作目のアルバム「こわれもの」からロジャー・ディーンが担当するようになり、イエスと言えばロジャー・ディーンと言われるほど有名になった。
幻想的で美しい作風はイエスのサウンドにぴったりマッチしていて、アルバムジャケットのイメージとサウンドが表裏一体となって完全に脳裏に焼き付いている。

Renaissance / Turn Of The Cards:ルネッサンス / 運命のカード

Renaissance_Turn Of The Cards「シンフォニック・ロック」と「ブリティッシュ・トラッド・フォーク」の融合、そしてアニー・ハスラムの歌声が加わると、他のグループにはない唯一無二のサウンドになる。
聴き始めると、何故か哀愁のような郷愁のような気持と共に、ピュアな自分に出会える感じがする。

どのアルバムも魅力的だが、敢えてジャケットで選ぶとこれになる。

ELP / tarkus:ELP / タルカス

ELP_tarkus冒頭のタイトル曲「タルカス」を初めて聴いた時は、「カッコイイー」と思わず叫んだ。
アルマジロ戦車が疾走しているような躍動感、キャタピラが回るかのように変拍子のアルペジオを繰り返すハモンド・オルガン。Jazzのモード奏法のように転調する緊張感。この斬新な演奏をトリオでやっている衝撃。何もかも新しかった。
日本びいきだったキース・エマーソンは、右手のダメージで以前のように演奏できなくなり、旅立ってしまった(涙)。
日本人の奥様との間には二人の息子さんがいるそうだ。

King Crimson / In The Wake Of Poseidon:キング・クリムゾン / ポセイドンのめざめ

KingCrimson_In-The-Wake-Of-Poseidonデビューアルバム「クリムゾン・キングの宮殿」があまりにも有名なので、セカンドアルバム「ポセイドンのめざめ」は、正しい評価がされていないかもしれない。しかしこのジャケットには興味を引かれる。
見開きジャケットには12人の顔が描かれていて、「ポセイドン」の名の通り、ギリシャ神話に出てくるオリュンポス12神かと思ったら、そうではなかった。調べてみると以下の記述があった。
(1)愚者(火と水)/(2)女優(水と火)/(3)オブザーバー(科学者)(風と土)/(4)老婆(土と風)/(5)戦士(火と土)/(6)奴隷(土と火)/(7)子供(水と風)/(8)総主教(風と水)/(9)論理学者(風と火)/(10)ジョーカー(火と風)/(11) 魔女(水と土)(12) 母なる自然(土と水)*草の中に横たわって眠るもの
何れも「土・風・火・水」をテーマにした、ドラマが描かれている。

Genesis / Nursery Cryme:ジェネシス / ナーサリー・クライム

genesis_Nursery Crymeナーサリーライムは英語で童謡のこと。このライムをクライム(犯罪)やクライ(泣く)の意味を込めて、ナーサリー(保育所)のクライム(犯罪)という造語がタイトルになっている。邦題は「怪奇骨董音楽箱」(笑)。
ある日クロッケーで遊んでいたシンシアちゃんは、一緒に遊んでいたヘンリーくんの頭を打ちぬいてしまう。後日、シンシアちゃんはヘンリーくんの寝室でオルゴールを見つける。それを開くと「Old King Cole」のメロディーが流れるとともに、ヘンリーくんの亡霊が現れて…。
1曲目「The Musical Box」は、本当は怖いマザーグースの世界がモチーフになっている。



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