アートとしてのアルバムジャケット:Jazz編_part1
2020/07/30
Jazzのアルバムジャケットは、訴える世界観がロックとは違うせいか、デザインの方向性が異なる感じがする。
個人的には、写真とタイポグラフィーの優れた作品が多い印象を受ける。
Bill Evans_Jim Hall / Undercurrent:ビル・エヴァンス_ジム・ホール / アンダーカレント
ビル・エヴァンス(ピアノ)とジム・ホール(ギター)という最高峰のジャズ・ミュージシャンによるデュオ。当たり前だが弾きまくったりせず、お互い相手の音を聴きながら間を埋め、最低限の音で受けたり返したりしている。
暫く謎だったアルバムの写真は、トニ・フリッセルというアメリカの女性写真家が、ウィーキ・ワチー・スプリングス(フロリダ州立公園)にある、マーメイドショーをしている施設で撮影したものだ。 元の写真:Weeki Wachee spring
Wes Montgomery / California Dreaming:ウェス・モンゴメリー / 夢のカリフォルニア
オクターヴ奏法と言えばこの人、ジャズ・ギタリストのウェス・モンゴメリー。リー・リトナーのアルバム「Wes Bound」、エリック・ジョンソンの「East Wes」という曲など、多くのギタリストに影響を与え、リスペクトされている。
ジャケットがドラマを感じさせるこのアルバムは、ポップスやスタンダードのカヴァーで、聴きやすいアレンジの中で、ウェス・モンゴメリーがいつものようにリラックスして演奏している様子がうかがえる。
Keith Jarrett / The Koln Concert:キース・ジャレット / ケルンコンサート
1975年、ドイツのケルンで行われたピアノのソロコンサート。驚いたことにこれほど美しい演奏を完全即興で奏でてしまうのがキース・ジャレットだ。コンサート当日の逸話は諸説あるが、大まかにまとめると次のような感じ。
会場に用意されるはずのピアノが届いておらず、使えるのはリハーサル用の古くて調律不十分で足のペダルも壊れているベーセンドルファー。キース自身は、持病の背中の痛みを抱えながら長旅で徹夜状態。さらにコンサートの開始時間は当日行われるオペラ終了後の23時30分というコンディション。
劣悪な環境でも「創造の神に祈りを捧げ、神の声としての音楽を聴き、それを自身の体を通してピアノを弾く」という彼の演奏姿勢がこのような名盤を生んだ。
Weather Report / Heavy-Weather:ウェザー・リポート / へヴィー・ウェザー
ジョー・ザビヌル、ウェイン・ショーター、ジャコ・パストリアスという鬼才、天才が集まった黄金時代の名盤。
前衛的であり、得体のしれない音や複雑なリズムを使うが、それがスパイスのように効いて、乗りがよく聴きやすい作品に仕上げてしまう。最近のスムースジャズには無い文字通りの「クロスオーヴァー」であり「ジャズ・フュージョン」。
ジャコ・パストリアスは多くのベーシストに多大な影響を与えたが、晩年の悲惨な生活やつまらない死に方をしてしまった事実に、私は相当ショックを受けた。
Sonny Clark / Cool Struttin:ソニー・クラーク / クール・ストラッティン
日本では名盤とされているが、本場アメリカでは、ソニー・クラークの存在感が薄い。理由は、ドラッグの影響であまりNYのライブスポットで演奏できず、しかも31才の若さで逝ってしまったからだ。最近アメリカでも見直されつつあるというが、そもそも日本人とアメリカ人とで好みが違うのかもしれない。
1曲目のタイトル曲は、ジャケット写真のイメージ通り、モダンな街並みをクールに歩いているような印象の曲。2曲目の「Blue Minor」は、最近NHKの朝ドラで、ドラマー役の男性が演奏するシーンで使われていた曲。