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アートとしてのアルバムジャケット:ギタリスト編_part1

2020/07/30

ギタリストと言っても、ソロ作品でない限り他の演奏者はいるし、シンガーソングライターもいれば、マルチプレーヤがいるかもしれない。ここでは単純に私がインスパイアされたギターの演奏を思いつくままにチョイスするため、ギタリストの定義は曖昧で、順番にも意味はない。
ただ、こうして昔聴いてきた音楽を棚卸ししてみると、当時の自分の感性と周辺の様子が思い出され、新しい観点で気づきが生まれたりする。こういう時間は結構有意義なのかもしれない。

Dave Mason / Let It Flow:デイヴ・メイスン / 流れるままに

Dave-Mason_Let-It-Flow1977年の作品。レイドバックした雰囲気と、控え目だけどセンスの良いギターと渋い歌声。聴けば聴くほど味がでるスルメイカ的アルバム。

デイヴ・メイスンは元々イギリス人で、トラフィックなどのブリティッシュロックシーンで活躍していたが、アメリカに移住した後、西海岸の影響もあり、その音楽性に幅や深みが出たように思う。

ジャケットのアートワークは「横尾忠則かな?」と思ったけどそうではなかった。クレジットには、Art Direction:Tom Steele、Design and Art:Mick Haggerty とある。

Jeff Beck / Blow by Blow:ジェフ・ベック / ブロウ・バイ・ブロウ

jeff-beck_blowbyblow私が20歳前後の頃、ジェフ・ベックの写真を持って美容室に行き「こういう髪型にして下さい」とお願いした事がある。
今の私は、既にヘアースタイルをいじることも出来ない状況だが、ジェフ・ベックは昔と全く同じようにステージで生き生きとギターを弾いている。
その姿はまるでギター小僧のようで、「本当にギターを愛しているんだな~」と、つくづく感じる。

ジェフベックグループもBBAも好きだが、この「ブロウ・バイ・ブロウ」からジャズ・ロック的なアプローチになり、完全インストのジェフスタイルが始まった。
ただトリッキーでロックなギターを弾くだけではなく、ハミングバードのメンバー達によるグルーヴ感と、マッスク・ミドルトンのエレピとの融合が素晴らしいアルバム。プロデューサーのジョージ・マーティンの影響も大きい。

ジャケットは絵だが、裏ジャケットは絵のもとになった写真で構成されている。

Allan Holdsworth / i.o.u:アラン・ホールズワース / アイ・オー・ユー

Allan-Holdsworth_iou超絶テクニックと独特のウネウネした速弾きで、独自の世界観を確立したギターレジェンド。

ソフトマシーン、UK、ブラッフォード、ゴング、ジャン・リュック・ポンティ、トニー・ウィリアムス…、彼が参加しているアルバムを探しては手に入れるという時期もあり、相当ハマった。

色々なグループを渡り歩いて素晴らしい演奏を残しているが、彼の理想のサウンドではなかったのか、大体1枚のアルバムで立ち去っている。そんな活動だったため、経済的に困窮していたらしく、子供のミルク代のために楽器などの機材を売りに出したという話も聞く。借金をして自主制作したアルバムがこのi.o.uだと言われてているが信憑性は不明。i.o.uとはつまり、I Owe You、借用証書という意味のようだ。

しかし、このアルバムが素晴らしい。今までのギターではあり得ないようなコードヴォイシング、レガート奏法とアームを組み合わせた独創的な表現、シンセの類は使っていないのにスペイシーで宇宙空間を思わせるような音響。何よりも難解なコードと複雑なリズムでありながら美しいところが良い。

ジャケットは最初発売された時は黒、その後再発されたものは赤になっている。

今年(2017年)の4月に、アランは突然亡くなってしまった。ギターレジェンドが逝ってしまうのは悲しい。R.I.P

Pat Metheny & Lyle Mays / As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls:パット・メセニー & ライル・メイズ / ウィチタ・フォールズ

As Falls Wichita So Falls Wichita Falls私のフェバリット・ギタリストのパット・メセニーは、様々なアーティストとの共同名義で多くのアルバムを発表している。

その中でも「パット・メセニー・グループ」名義の作品は、いつも斬新で、Jazzの枠を大きく超え、豊かな音楽性に心を激しく動かされた。

その「パット・メセニー・グループ」に無くてなならない存在のピアニスト「ライル・メイズ」との共作がこのアルバム。
この二人が奏でる音楽は、言葉では表現できない胸の奥深くにある心象風景を見事に音で表現する。何故、これほど人の心の繊細な動きを表現できるのだろうか?

「September Fifteenth(9月15日)」は、このアルバムが録音される直前に亡くなられたビル・エヴァンスに捧げた曲。悲しい曲だが、次の「It's for You」で希望に向かって歩みだし、最後の「Estupenda Graça」で、この大地に感謝し、宇宙に思いを馳せ、世界を包み込むような大きくて清くて温かい気持ちにさせてくれる。

ジャケットの写真もドラマチックな雰囲気でお気に入り。

George Harrison / All Things Must Pass:ジョージ・ハリスン / オール・シングス・マスト・パス

george-harrison_all-things-must-pass1970年リリースの本アルバムは3枚組で、発売当初の私は小学生だし、ビートルズを聴きまくっていた中学生時代でも、高価なこのアルバムを購入する力はなかった。そんな訳でこのアルバムを全部聴いたのはかなり年齢がいってからのことだが、ジョージの才能が発揮された素晴らしいアルバム。

ビートルズの抑圧から解放されて自分らしさを存分に出せた、ということがあるかもしれない。さらに東洋的な思想と宗教の影響、そしてビートルズ以外のミュージシャンとの交流によって大きく才能を開花させた時期のように感じる。

バックで演奏するのは、この後「レイラ」を録音するデレク・アンド・ザ・ドミノス。ジョージってこんなにギターが上手かったのか、と思ったらエリック・クラプトンだった、という箇所がいくつもある。
しかしジョージの良さは、ギターのテクニックではない。その内省的な人間性が滲み出た楽曲と歌、そして味のあるギターだ。

ジャケットのデザインはトム・ウィルクス、写真を撮影したのは、バリー・ファインスタイン。4体のノーム人形に囲まれて座っている印象的なこの場所は、彼の邸宅「フライアー・パーク」前の芝生。



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