アートとしてのアルバムジャケット:Rock編_part2
2021/11/13
Led Zeppelin / Physical Graffiti:レッド・ツェッペリン / フィジカル・グラフィティ
レッド・ツェッペリン6作目の本アルバムは、2枚組で発売された。当時のオリジナルジャケットは、表紙で描かれているアパートの窓がくりぬかれていて、内袋の入れ方によって絵が異なるような仕掛けになっていた。
LPの時代は、このように洒落たジャケットがあって実にいい時代だった。
デザインの建物は次の住所に実在するアパートで、Google Mapで調べてみると今でも存在しているようだ。
96 St Marks Pl, New York, NY 10003
サウンドの方は、建物の様々な部屋を訪ねるように、多彩な作品が詰め込まれているが、ジョン・ボーナムのドラムスとジョン・ポール・ジョーンズのベースにジミー・ペイジのリフが乗り、ロバート・プラントが発声すれば、どんな楽曲でも唯一無二のツェッペリンサウンドになる。
アルバム制作前に、ジョン・ポール・ジョーンズの脱退騒動があったようだが、この頃のツェッペリンは音楽的に最も充実していたように感じる。
10cc / How Dare You !:10cc / びっくり電話
ポップで美しい曲を作るエリック・スチュワートとグレアム・グールドマン、前衛的で技術屋のケヴィン・ゴドレイとロル・クレームという4人が制作した最後の作品。
このアルバムの制作直後にケヴィンとロルは脱退し「ゴドレイ&クレーム」として活動を始める。
その後の10ccも好きだが、この4人がいい意味で刺激し合い作り上げた作品にとても魅力を感じるし、この4人だからこそ生まれた傑作。
まるで映画を観ているような展開とストーリー性を感じる楽曲、そして歌の歌詞を連想させるヒプノシスのジャケットデザインも素晴らしい。
裏ジャケットや中ジャケットも電話をモチーフにした写真で「この人がこの曲に登場するあの人かな」といった楽しみもある作品。
FleetWood Mac / Rumours:フリートウッド・マック / 噂
1978年グラミー賞の最優秀アルバムを獲得するなど、大ヒットした作品だが、当時のメンバーは最悪の状況だった。
ミック・フリートウッドは妻のジェニーと離婚。前作からバンドに参加したリンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスは高校時代からの恋人同士であったが破局。夫婦でバンドメンバーだったジョン・マクヴィーとクリスティン・マクヴィーも離婚。
メンバー全員が難しい人間関係を抱えていたにもかかわらず、5人全員バンドに残りこのアルバムを作り上げた。
楽曲はほとんど彼らの心模様を歌っており、1年以上かけてレコーディングされたようだ。
例えば、シングルカットされて大ヒットした「Go Your Own Way」の歌詞はこんな感じ。
You can call it Another lonely day
You can go your own way Go your own way君は君の道を行きなよ 君だけの道をね
そこにはまた悲しい日々が待ってるだけなのに
君は君の道を行けばいい 勝手に行きなよ
メンバー間の葛藤が作品にも反映され、音楽以上に何か訴える情感のようなものを感じさせる。
彼らは、苦しみや悲しみなど様々な想いを作品に投入し、結果的に苦痛から癒され、最終的に許し合えるようになったのだと思う。
ジャケットの写真はミック・フリートウッドとスティーヴィー・ニックス。ミック・フリートウッドの股の下に玉がぶら下がっているが、彼はデビュー当時のライブパフォーマンスで、トイレの貯水槽にあるボールをぶら下げて、ドラムスを叩いていたという逸話がある。
Queen / II:クイーン / II
誰もが知るビッグなバンドだが、私は初期の頃のクイーンが特に好きだ。
2作目の本アルバムは、ブライアン・メイ中心の「サイドホワイト」と、フレディ・マーキュリー作曲の「サイドブラック」という白と黒の2つのコンセプトに分けられている。
ヘヴィでドライブ感のあるロックでありながら、クラシックの組曲のような構成と美しさ、プログレッシヴ・ロックのようでもあり、キャッチーなポピュラーソングにもなる。
特に、フレディ・マーキュリーの比類なる作曲センスとブライアン・メイの繊細なギターオーケストレーション、そして随所に表れる分厚いコーラスワーク。
クイーンの世界観はアルバム2作目にして既に完成されている。
アルバムジャケットの写真は、伝説のロック・フォトグラファーのミック・ロックによるもの。彼については、2017年に「SHOT! The Psycho-Spiritual Mantra of Rock」というドキュメンタリー映画も作られている。
Eagles / One Of These Nights:イーグルス / 呪われた夜
次作のホテル・カリフォルニアが余りにも有名だが、本作品はカントリーロックを残しつつ、次第にロック色を強めていく絶妙なバランス感が良い。
アメリカンの乾いた音と、どこか憂いを帯びた楽曲とコーラスの美しさ。そしてギターのアンサンブルも冴えている。
この頃からメンバー間の確執があったり、ドラッグの影響があったり、アメリカ自体がベトナム戦争の後遺症という背景の中で、どこか退廃的な文化や生活を嫌いながらも、そこから脱することのできない葛藤が随所に見られるが、それを糧に音楽性が高まっていったのかもしれない。
思い悩んでいたランディ・マイズナーは、絶望からもう一度這い上がろうと「Take It to the Limit」という名曲を生んだ。
意味深なジャケットのデザインは、発売当初エンボス加工(表面が凹凸)してあり、さらにイラストの部分だけ浮き上がっているようにな作りになっていた。