船の穴を塞ぐか、目的地に進むか
2020/07/22
「カウンセリングとコーチングの違いは何か」と問われた時に、私はこう答えます。
カウンセリングは「問題志向・原因究明型」、コーチングは「結果志向・目標達成型」だと。
もちろん例外はありますが、概ねこのような方向性の違いが大きなポイントであると考えます。
分かりやすい例え話として、船の話をします。
船の航行中、船底に穴が空いてしまって水が入ってきました。
どうして穴が空いてしまったのか、どうやって穴を塞ぐか。
ここに意識を向けるのが「問題志向・原因究明型」です。勿論どんどん水が入ってきて「このままでは船が沈んでしまう」となれば、急いで浸水を止める措置が必要です。
一方、浸水はほんの僅かで、このまま航行を続けても十分目的地に到達することができれば、走り続けた方が良いでしょう。
こちらが「結果志向・目標達成型」です。
通常の船の目的は、行きたい場所に向かって海上などを移動することであって、船自体を立派にすることは目的に対する属性のようなものです。いかに早く、あるいは安全に・確実に目的地に到着することの方が、より重要なのは言うまでもありません。
大した穴ではないのに、航行を止めて「どうやって穴を塞ぐか」を真剣に考えている、こういうケースがカウンセリングには少なからずあります。
薬を与えて(穴については)楽になるが、麻痺した結果、どこに行くのか考えられなくなってしまう、といった精神科医療があるかもしれません(カウンセリングや精神科医療を否定している訳ではありません。必要な患者さんもいます)。
あるコーチングの本に以下のような事例がありました。
ある人がガンを患い、一度回復したものの再発してしまいました。
再発、転移ということで、その方はあまり生きることに希望を見いだせなくなったそうです。
ここで「どういう治療をするか」にばかり意識を向けると、「私はガンだ」という認識が強くなります。
人間の無意識は、イメージしたものを実現する特徴がありますので、「私はガンだ」という状態をさらに実現し続けることになります。
負のイメージトレーニングをしているようなものです。
ところが、あるNLPを学んだ担当医はこう言ったそうです。
「病気が治ったら何がしたいですか?」
その人は治るとは思っていなかったので、しばらく答えることが出来なかったそうですが、やがて抑えていたものが溢れるように、旅行のこと孫のことなどを嬉しそうに話したそうです。
数か月過ぎるにつれてガンはどんどん小さくなり、とうとうその人は回復したそうです。
イメージが現実を作りだす力を持っているということです。
人生を航海に例えるなら、多少船はガタがきていても、「目的地はどこで、どのようにそこへたどり着くのか」を明確にすれば、十分荒波を乗り越える力を発揮できるということです。
そして、当初問題だと思っていたことも、目的地に到着している頃には解決している、ということもよくある話です。
写真:Don McCullough、djandyw.com