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アートとしてのアルバムジャケット:Rock編_part1

2020/07/22

Rockと呼ばれる音楽のジャンルはあまりにも幅が広くて、細かく分けたらきりがない。
私は昔「ポピュラー音楽史」という科目を専門学校時代に学んだことがある。
それによると、アメリカのニューオリンズ辺りに連れてこられた黒人の労働歌(ブルース)と、白人の教会音楽が融合して、JazzやRockの源流が生まれた、と記憶している。
黒人がメジャーになるにはボクサーかミュージシャンになるしかないような当時のアメリカで、白人が黒人のサウンドを取り入れ始めたところにRockの斬新さがあった。

The Beatles / Abbey Road:ザ・ビートルズ / アビーロード

beatles_abbey-road50年代のアメリカで誕生したロックンロールが、イギリスの四人組によって革新的な飛躍を遂げ、音楽のみならず文化やライフスタイルに至るまで影響を及ぼした。中学生時代にビートルズにハマった私は、新しいレコードを買ってくるたびに新鮮な衝撃を受け、期待を裏切られることはなかった。

この「アビーロード」は、スタジオ録音としては実質最後のアルバムで、特に後半のメドレーはジョンとポールの捨て曲で構成されているらしいが、これほど素晴らしい作品に仕上げてしまう彼らはやはり天才集団だ。ビートルズマジックは今でも燦然と輝き続けている。
レコードジャケットについてのエピソードは語り尽くされているので、ここでは割愛。

Rainbow / Rising:レインボー / 虹を翔る覇者

rainbow_risingレッド・ツェッペリン、ディープ・パープルに代表されるハードロック全盛時代から、パンクやヘビメタ(ヘヴィーメタル)という新しい支流が出てきた時代、ディープ・パープルのギタリスト「リッチー・ブラックモア」が新しく結成したのがこのレインボー。
恐らく、Burn(紫の炎)辺りで、やり尽くしたリッチー・ブラックモアは、新しいバンドで次のステージに上がりたかったのだろう。パープル時代、ヘヴィーなロックにバッハの要素入れるなど、ロックの変革者とも言える彼は、このアルバムでは中東を思わせるサウンドも融合させ、ハードロックの様式美を確立した。この世界観と見事にマッチしたアルバムのアートワークは、アメリカのイラストレーターKen Kellyの作品。

Steelydan / The-Royal-Scam:スティーリー・ダン / 幻想の摩天楼

steelydan_the-royal-scamスティーリー・ダンをジャンルで括るのは不可能だ。ジャズでもソウルでもポップでもファンクでもない。取りあえずこのアルバムはロックのカテゴリーに入れておく。
ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの二人は、緻密に計算されたアンサンブルを、その都度集められた超一流のミュージシャンに演奏させて、妥協のない独特の世界を創り上げる。
昔はジャケットを眺めながらレコードを聴く習慣があったので、妄想を駆り立てるようなジャケットは、もう一つの音楽の楽しみ。このアートワークは、Zoxというチームがアメリカで暮らす移民の厳しさを描いているそうだが、歌詞の意味が良く分からない私は、勝手にイメージを膨らませて小説を読んでいるような感覚を楽しむ。

Rush / Moving-Pictures:ラッシュ / ムーヴィング・ピクチャーズ

rush_moving-picturesブリティッシュほど湿っていないし、アメリカンほどカラッとしていないカナダのトリオ。
個人的には次のアルバム「Signals」の方を愛聴したが、プログレハードと呼ばれるように、技巧的な部分とキャッチーでメタリックな部分が洗練され、ラッシュスタイルが確立した集大成のアルバムが本作品だろう。
ジャケットのデザインに使われた写真はカナダのオンタリオ州議会議事堂で、ラッシュファンの聖地となっている。

Supertramp / Even in the Quietesy Moments:スーパートランプ / 蒼い序曲

supertramp_even-in-the-quietesy-momentsスーパートランプは「ブレックファスト・イン・アメリカ」で大ブレイクするが、前作のアルバム「蒼い序曲」は、アメリカ進出を果たしてポップになりつつも、それまでのプログレ路線を残しつつ、いかにもブリティッシュで哀愁に満ちている。特に、ロジャー・ホジソンの歌声はただただ切ない。
印象深いジャケットの写真は、実際の雪山にピアノを持ち込んで撮影されている。ピアノに置かれた楽譜には、「Fool's Overture(邦題:蒼い序曲)」と記されているが、実際には米国国歌の譜面だそうだ。



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